ワイルドキャットは何故撃たなかったのか

1942年8月7日
ガダルカナル島で、歴史に残る、零戦とワイルドキャットとのドッグファイトがあった。
零戦のパイロットは坂井三郎。
ワイルドキャットのパイロットはジェームズ・パグ・サザーランド。

坂井三郎は既に50機以上の航空機を撃墜していた凄腕パイロット。
サザーランドはボクシングで養った距離感を生かし、トップクラスのパイロットになった。

零戦は、広い太平洋を飛ぶために、軽量化されており、1000km先まで飛んで戦い、1000kmを飛んで帰ることができた。
ワイルドキャットが一回の給油で航行できる距離は380kmだったが、これは当時の平均的なレベルである。

しかし、零戦には大きな欠点もあった。
急降下性能が低く、何より恐ろしいのは無いに等しい防弾性能だ。
ボディはナイフで切れるほど薄くかった。
弾が当たればすぐに火の玉になったので、アメリカ軍からは”空飛ぶ葉巻”と言われていた。

大日本帝国軍の爆撃機が目的地に向かう間、零戦がそのサポートしていた。
しかし、ワイルドキャット部隊に見つかってしまい、攻撃を受けた。
その中でもサザーランドの操縦はずば抜けて上手く、たちまち零戦に目をつけられて集中攻撃を受けた。
ワイルドキャットは急降下が得意で、零戦は苦戦をしていた。

後から来た坂井が、零戦とやりあうサザーランド機を発見、その腕の良さに驚いた。

そして、坂井が応戦し歴史的なドッグファイトが始まったのだ。
エース同士の1対1のドッグファイト。
坂井の操縦する零戦がサザーランドが操縦するワイルドキャットを捕捉、7.7mm弾を命中させた。
しかし、防弾性が高く、防火加工もされていたワイルドキャットは落ちなかった。

そこで20mm弾を命中させようとした瞬間、サザーランドが坂井の後ろについた。
ところがサザーランドは弾を撃たなかった。

何故撃たなかったのか?あるいは撃てなかったのか?

坂井がワイルドキャットの横に着いてコックピット内を覗いたら、そこには血を流して負傷していたサザーランドの姿があった。

坂井は止めを刺すべきか迷ったそうだ。
自伝には、故意に照準を外したと書かれていた。
坂井は飛行機だけは破壊し、サザーランドは脱出した。

サザーランドは拳銃を持って脱出したが、脱出の際に拳銃を無くしてしまった。
サザーランドは無事脱出できたが、そこは日本軍が支配する島。
日本軍に見つからないよう、ジャングル深くに逃げた。
サザーランドは怪我を負った状態で、日本軍とジャングルの獣や毒虫から、
丸腰で自分の身を守らなければならなかった。

そして、何とか反対の砂浜に辿り着いたが、酷い脱水症状で倒れ、倒木の影で眠ってしまった。
しばらくしてから目を覚ましたサザーランドは、現地人が近くにいたので、助けを求め、何とか生き延びることができた。

研究者は、何故サザーランドは坂井を撃たなかったのか、その真実を知るために、ガダルカナル島て調査を始めた。

サザーランドが操縦していたワイルドキャットの残骸を見つけ、エンジンを坂井に撃たれていたことが分かった。
しかし、それだけでは撃たなかった理由が分からない。

しばらく調査を続けていると、ワイルドキャットの12.7ミリ弾が見つかった。
これで、弾切れでないことが分かった。そしてさらに重要な事実が発覚。
12.7ミリ弾の雷管が破損していた。12.7ミリ弾の破損箇所と、7.7ミリ弾と一致。
装填装置が零戦の7.7ミリ弾を浴びていたのだ。

日本軍の7.7ミリ弾が、サザーランドの翼を撃ち抜いていた。
それにより、サザーランドは弾を発射出来なかったのだ。
どの零戦の弾が撃ちぬいたのかは分かっていない。

サザーランドのワイルドキャットを撃墜した坂井は、別の敵機を見つけ、撃墜しよと接近した。
しかし相手は旋回機銃座を備えた爆撃機だった。マズイ!と思ったが既に遅かった。

坂井は被弾した。射手のハロルド・ジョーズも坂井に命中した瞬間を見ていた。
坂井に弾が当たった瞬間、その衝撃で坂井は座席に押し付けら、前のめりになり、
コクピットから身体が見えなくなったそうだ。

坂井は朦朧としながら零戦を操作しようとしたが、左半身麻痺していた。
何と、弾は坂井の右目の上から脳を貫通し後頭部から抜けていたのだ。

気絶しそうになるたびに坂井は傷口を触り、目を覚ました。
坂井は最期に自分の命を日本に捧げようと敵艦を探したが、途中で母親の事が思い浮かび
本能的に戻るよう死に物狂いで操作した。
半身麻痺、片目の視力を失い、意識朦朧とした状態で、5時間零戦を操作してラバウル基地に辿り着いた。

結果的には坂井は勝利した。
二人は戦いの後、互いに地獄を味わい、何とか生き抜いた。
坂井もサザーランドも回復し、その後の戦闘に加わった。

坂井は右目に障害を持ちながら活躍、終戦までに連合軍の航空機を64機撃墜したそうだ。
本来なら片目で距離感を掴むことすら困難なはず。

サザーランドもその活躍に殊勲十字章を受賞。士官学校で教官となったが、空母から離陸する際に事故を起こし亡くなった。

坂井は零戦最期の出撃を終えた時に、
「例え相手が蚊であろうと二度と生きるものの命を奪うまい!」
と心に決めたそうだ。

坂井はかつて戦ったアメリカ人との和解も積極的にすすめ、頭を撃ち抜いたハロルド・ジョーズとの再開も果たした。
坂井はハロルド・ジョーズと会うまで、彼がどう接してくるのか不安だったそうだ。
しかし会ってみたら、互いにぎっちり手と手を握り締め、肩を組み笑顔で接してくれた。
互いに兵士として命を奪い合う関係であったが、”国を守る”と言う同じ使命を受けていた者同士、
我々が想像できない程感慨深い気持ちになったのだろう。

Follow me!

ワイルドキャットは何故撃たなかったのか” に対して 2 件のコメントがあります

  1. 匿名 より:

    空飛ぶ葉巻は一式陸攻

    1. 都会汁 より:

      これは良い情報を頂きました。アメリカのドキュメンタリー番組の情報を鵜呑みにしていました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。